チベット医学とは②
チベット医学の学び方
- 基本となるのは4つの医典
- 医学生は、最初の2年間で『四部医典』のうちの、第1、第2、第4のタントラ、つまり『根本タントラ』『釈義タントラ』『末尾タントラ』を暗記する
- この段階では第3の『秘訣タントラ』は学ぶだけで暗記はしなくてもいい
- 2年が終わり、本格的な医学課程にないると、「医学の樹」のイラストを参考に『根本タントラ』を学ぶ
- 次の年には胎生学、病因を主に取り上げる『釈義タントラ』を学ぶ
- 3年目には診断法、中でも『脈診』と『尿診』を扱った『末尾タントラ』を学ぶ
- 最後の年には(その後も)、診療所で先輩医師の監督のもと、実習する
- チベット医学では医師が薬剤師を兼ねている
- 夏の間、医学生は山で薬草や植物について学び、冬の間は薬の作り方を学ぶ
『四部医典』の起源
- 薬師如来がこの世に現れ、悟りを開き、法輪を転じる(教えを説く)などをされる
- 将来、第4のブッダである釈尊が、人を教え導くためインドに薬師如来として出現するであろうと予言する
- 釈尊が薬師如来として顕現したとき、その心臓部からは阿閦如来、頭頂部からは大日如来、喉からは阿弥陀如来、へそからは宝生如来、生殖器からは不空成就如来が出現した
- そして阿弥陀如来が教えを請うと、阿閦、宝生、大日、不空成就の各如来が、それぞれ4つの医典を説いた
- 阿閦如来が『根本タントラ』、大日如来が『釈義タントラ』、宝生如来が『秘訣タントラ』、不空成就如来が『末尾タントラ』を説いた
根本タントラ・・・健康な身体について
- ルン、ティーパ、ケーペンの3体液が病気の主因になっていない、3体液のバランスが取れている状態
- 違う言い方では、病気は自然かたちで内部に存在しているが、表に出現する条件が整っていない
- 根本タントラの第3章・・・チベット医学で最も大切なテーマ・・・3体液と、さらに体液それぞれに5種類のバリエーションがあるので、15の体液の働きについてを解説
- 同じく第3章・・・5つのルン、5つのティーパ、5つのペーケンについて
釈義タントラ・・・胎生学と病気の原因について
- 15の体液、それぞれの特性
- 受胎、胎児、誕生から死に至るまでの過程
- 病気の主因、補助因(縁)
- 病気の分類、病気の性格
- 生活習慣、生活態度
- 健康維持と食生活
- 薬の味と効力
- 健康維持、長生きの方法
- 医者の患者に接する心がまえ
秘訣タントラ・・・3体液の乱れによる101の病、主因、補助員、症候、治療法
- 患者はまず、①食事療法と生活態度を改善する
- それでも効き目がなかったら、②次に投薬
- 最後に投薬しても効果がない場合の③補助治療
末尾タントラ・・・尿診、脈診、薬の作り方
- 診断法・尿診、脈診
- 薬の調合
- 完全治癒するための薬物療法・・・下剤や吐剤
- 薬草が効かないときの補助治療・・・鍼灸、外科手術など
病の基本的原因は「無明」
- 問題の原因は「無明」であり、病気もその原因もすべては「無明」に由来している
- 無明から無知が生じ、心が無知の闇に覆われる
- 不健全な心の状態となり貪りの心が増すと、結果として悪行を犯して、悪しきカルマを重ねる
- 無知から怒りが生じると、人を罵倒したり、悪口を言ったり、攻撃したりする
- 同じように嫉妬により競争したり、慢心して、他人を見下す
根本的煩悩(三毒)・・・「無知」「怒り」「貪り」
「重い」「鋭い」「ねばねばしている」という性質の無知からは「ペーケン病」が増大する
「魅せられやすい」「軽い」「揺らぎやすい」という性質の貪りの心から「ルン病」が生じる
「怒り」は火に似ており、怒りからは「ティーパ病」が引き起こされる
すべての大もとは無明
無明によって輪廻を繰り返し、生老病死を繰り返している
無明は私達自身の影のようなもの。
無始の過去より、無明という病の大もとを抱えている
これがチベット医学の大好きなところ!!
健康なときにも、人生がうまくいっている時にも、人は、無明という原因を内包して生きている。
今がたまたま病気になっていないだけで、条件がそろってしまうと病気が出現する
または、困難となって目の前に現れる
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